2024.04.08 平林光明(放送を語る会・大阪)

                        

NHKの「新年度編成 地上波に見る企画力の後退」
 新年度になりニュースなどの担当者変更が発表されている。とりあえず1週間視聴してみた。
6日(土)に放送された「新プロジェクトX」は期待にたがわぬ力作だった。

あの2011年3月11日、私は千葉県の大多喜で東日本大震災に遭遇し翌日必死の思いで東京に向かった時、運転再開したJR総武線の車中から完成間近のスカイツリーを見て、無事な姿に励まされたことを覚えている。まさかあのてっぺんで、命をかけた死闘がおこなわれたていたことには思いも及ばなかったことに、胸が熱くなった。
この番組には多くの人からモニター報告が届くだろうからこの位にして、その陰に隠れた企画力、編成力の弱体化を考えてみたい。
 1つは、朝ドラの再放送時間帯である12:20分から12:45分までの編成である。

わずか25分の時間だが、『いい移住』『にほん百低山』など、きらっと輝く小品が並んでいた。

それが10分のミニ解説と、あっと驚く朝ドラ旧作の再放送である。多くの名作を生み出していることから旧作はコンテンツの宝庫である。

これまでもBSや地上波の午後の時間帯で繰り返し再放送されているが、新旧朝ドラの2階建て放送は恐らく初めてではないだろうか。

回選ばれた『ちゅらさん』は人気作だったし、「スーちゃん」や「おばあ」の顔を見られるのは懐かしい。

しかし、今押し出さねばならぬのは『虎に翼』である。『ちゅらさん』ファンを取り込もうとしたのかもしれないが、相乗効果よりも相殺関係にならないだろうか。私などはストーリーが2つ続いてこんがらないかと心配するが?
 もう1つは、金曜日22時30分からの新番組『時をかけるテレビ』である。

OBとはいえ今や民放でいくつもの冠番組を持っている池上彰さんを起用して、どんな大番組を作るのかと思ったら何とこれも過去のドキュメンタリーの再放送である。今回の「核戦争後の地球とは」は今見ても身の毛のよだつ話であるが、池上さんは番組の前振りと後受けだけの役での

登場。仕掛けだけで中身は再放送といういささかだまされたような気分であった。

 

 2つだけ紹介したが、ここに政権の受信料大幅値下げとチャンネル削減要求を唯々諾々と受け入れ、これまで培ってきたNHKk各部署の専門性の蓄積を破壊した“前田改革”の弊害が表れているのではないかと心配になった。

再放送に頼る企画力、編成力の貧しさは、NHKを自壊の道に引きづり込まねばいいが…。

                           


2023.10.22 今井  潤(放送を語る会)
                          
「相次ぐ民放のジャニーズ問題・検証番組、次はNHKの番だ」
 昨日10月21日(土)14時から、フジテレビは「ジャニーズ事務所 性加害問題 メディアの沈黙」を22分放送しました。
すでに、10月4日(水)に日テレが「メディアの沈黙」で局内の調査を25分放送し、10月7日(土)にはTBSが報道特集の中で
「ジャニーズ問題とメディア」として、いつものキャスターが30分以上放送しました。
                  
 21日のフジテレビの検証番組を詳しく報告します。
スタジオの男女アナと音好宏教授(上智大)が出演し、フジテレビの担当者77人に聴き取りしたと伝えました。
1999年に週刊文春がジャニーズの性加害を報道してからの訴訟、最高裁の判断などをフジは報道していなかった。
社会番組幹部は「芸能ゴシップ、スキャンダル的な受け止めだった」と答えています。
4月23日、ジャニーズ事務所が所属タレントの聞き取り調査を始めた段階から報道を始めたと報告。
スタジオ出演した渡辺奈都子報道局長は「芸能ゴシップ・スキャンダルといった古い価値観が根底にあった。未成年に対する性加害という
人権問題を考える報道に携わる者として深く反省している」
元報道局幹部「ジャニーズ事務所への遠慮や忖度があったと思う」
音好宏教授「報道部門が独立性をもって報道することが視聴者の信頼につながると思う」
性加害を”疑惑段階”で放送することのむつかしさを語るプロデューサーもいました。
情報制作局長「旧ジャニーズ事務所に必要以上に気を遣うことがあった」
編成制作局長「旧ジャニーズ事務所に対し、徐々に特別視するような空気が出来上がっていったことは否めません」
 最後にフジテレビはどう変わっていくべきか?について聞くと、
渡辺報道局長は「今の報道姿勢が正しいのかを自問自答して、日々の検証を重ねていきます」
音教授は「放送局は私たち国民の知る権利を扱う、圧力に負けていなかったか、自律性は守られていたのか、改めて確認してほしい」と
結びました。
                      
 他の、日テレTBSも「芸能ゴシップで人権問題とは受け止めていなかった」という点では同様の総括でしたが、まじめに調査したことは
認められます。フジテレビが音教授の意見を取り入れたことは重要で、客観的な評価が必要と思いました。
 さて、問題はNHKで、ジャニーズとは紅白やドラマなど人気番組での起用が多く、ジャニーズ事務所とも関係も長く、深いと思います。

稲葉会長になってだいぶ様変わりしているので、ジャニーズ問題の総括も期待しているところです。

                      

2023.06.30 imaijun
                       
◎私の好きな「街角ピアノ」(NHK-BS1)
街角、駅前、空港と世界の街角ピアノが毎日放送されていますが、私の好きな3つを紹介します。

                              

1、シチリア・パレルモ空港
  フィリピンの元音楽教師がワインのほろ酔いで弾くルルーシュの「男と女」
2、ロンドン駅
  91歳のブルーのネクタイの男性が弾く「GIVE THANKS」
3、広島駅
  右手しか使えない男性が弾く、松田聖子の「赤いスイートピー」
  彼の歌に30秒で泣いてしまいます。
                    
皆さんも好きな街角ピアノを教えてください。           

             


2023.02.14 今井 潤(放送を語る会)
              
◎特集ドラマ「ガラパコス・後編」働く。生きる。誰もが幸せになっていいはずだ。 NHK・BSプレミアム2月13日放送)
 2月13日(月)放送「ガラパコス・後編」は深く、感動しました
松本清張の社会派ミステリーのような、政・財・官を巻き込んだ犯罪を描き出し、特に現代日本資本主義の生み出した非正規、派遣労働の構造を暴露しました。
自動車製造の欠陥を告発しようとした派遣労働者を殺害した仕組みは現在のテレビ視聴者にはよく理解できるものです。
この事件を追及してきた刑事(織田裕二)が証人尋問で、「この派遣労働者は、許すことができない不正を告発しようとして口封じのために殺害されたということがこの事件の真相です」と述べるが、捜査は打ち切りとなります。
その背景には与党大物代議士と有力警視庁OBの仲立ちで強引な手打ちが行われたことが推測されたというコメントでした。
                     
久しぶりに、社会悪が追及され、断罪されるが、巨悪は眠るという図式が提起されましたが、それでも織田裕二と相棒の若い女優桜庭ななみ)が真剣に事件解決に取り組む姿は、溜飲が下がる思いで魅了されました。         
                                       

2023.02.11 平林光明(放送を語る会・大阪)

 

◎アナザーストーリー選 「イムジン河の奇跡」 NHK総合 210日(22時~2245分)

 

 私がこの「イムジン河」のメロディーを初めてきちんと聞いたのは、井筒和幸監督の映画『パッチギ!』だった。

エンディングのシーンに流れる哀調豊かなメロディーに、今はドライアイで出なくなった涙がこぼれ降ちると同時に何か懐かしい思いもした。

後でレコードが発売禁止になり放送でもオンエアーされないとわかった曲が、何故懐かしくハミングできたのが謎だった。

 「イムジン河」(北朝鮮では「リムジンガン」)はもともと北朝鮮で作られた曲。日本版はフォーククルセダーズの松山猛が、高校時代喧嘩に

 明け暮れていた朝鮮学校に、サッカーの試合を申し入れに行った時耳にしたのを、後に女学生から楽譜と1番の歌詞を譲り受け、2番を新たに

 創作して作り上げられたものである。コンサートなどでヒットの兆しを見せながら、レコード発売前日に突然中止となり放送などでも長らく

 禁止曲となった。理由は朝鮮総連から原作の作詞・作曲者名が無いこと、2番の歌詞が全く正反対のものに作り変えられていることに抗議が寄

 せられたことだった。

 韓国版も日本で活躍していたキム・ヨンジャさんが歌ったものが大ヒットしたが、南北関係が冷え込むにつれ「北の歌」として風当たりが強く

 なった。

 

  こうして政治の波に翻弄された名曲だったが、音楽の持つ力は人々の心に生きていく。フォーククルセダーズが北朝鮮の招きでコンサートを

 行った時、アンコール曲で用意した「イムジン河」がピョンヤンではどこの歌?という白けた反応だったのに、北朝鮮帰還船の寄港地だった

 ウオンサンでは、前奏から観客が一斉に立ち上がり涙を流す人が多かったという。多分日本で聞いた曲に懐かしさがこみ上げたのだろう。

 また拉致被害者として北朝鮮で暮らした蓮池薫さんは、時折ラジオで流れる「イムジン河」に随分励まされたと帰国後語っていたのは驚きだっ

 た。こうして3か国それぞれで違う道を歩いた「イムジン河」が、当事者の朝鮮半島でなく日本で長く親しまれているのも皮肉なものである。

 

 この作品は「アナザーストーリー」というタイトルが付いているのだから再放送なのだが、今見ても心に響く物語だった。

                        


2023.02.07 今井 潤(放送を語る会)
              
◎特集ドラマ「ガラパコス・前編」ある労働者の死が刑事の旅の始まり NHK・BSプレミアム2月6日放送)
                   
 NHK・BSプレミアムが心に刺さるドラマを放送しました。
2月6日(月)21時から放送の「ガラパコス」前編は、ある沖縄出身の派遣労働者の死をめぐり、刑事と相棒が真相を追及するドラマです。
派遣労働者に関する様々な問題に真剣に取り組む制作姿勢は高く評価されます。
原作の相場英雄さんはこの作品で山本周五郎賞の候補になりました
                    
 後編は2月13日(月)で解決編ですが、「働く。生きる。誰もが幸せになっていいはずだ。」と、
派遣労働者の死の真相が明らかになっていきます。
弱肉強食の現代社会を告発するのがテーマになっていて、この特集ドラマに感情移入してしまいます。
織田裕二の刑事と相棒を演ずる若い女優(桜庭ななみ)が新鮮でいいと思います。
ぜひご覧になってください。
                       

2023.01.29   山村惠一(放送を語る会・大阪)

 

NHKETV放送「100分で名著」をいつも録画して視聴している。

この番組は、20109月に放送された「資本論」をはじめに、翌年から25分間1か月4回放送の帯番組としてシリーズ化され放送されている。取り上げられるテーマは、文学作品から哲学、宗教、思想論や経済など多岐の分野にわたっている。著作の解説は作品全部には及ぶわけではないが、肝心なところは落とさず、視聴者に判りやすく100分でつたえるには、担当者の努力と理解の深さにいつも脱帽している番組である。

その中で印象深いのは、若いころ読んだ「砂の女」(安倍公房)・「変身」(カフカ)をみて再読もした。金子みすず、中原中也の詩集に共感し、「般若心経」、「日蓮の手紙」などではこれまでの宗教観を越えた普遍的な生き方の啓示も見た思いがした。とくに最近では著者の斎藤浩平さん(放送時大阪市立大学大学院准教授)による「資本論マルクス」では、新自由主義にみられるように行き詰まる資本主義の矛盾をバッサリ切り、マルクスが提唱した「コモン」を現代社会に適合する具体例を示しての解説(バルセロナの試みなど)に快哉をした。

昨年12月の放送は、夏に亡くなられた精神科医の中井久男(兵庫県出身)で、その著書「戦争と平和」のなかで、戦争とは「過程」で、平和とは「状態」とされていました。戦争には始めがあり、終わりが来る「過程」とし、平和とはエネルギーを注ぎ続けないと維持することがむつかしい「状態」とされていました。番組では判りやすく「部屋の整理」に例えて、散らかすのはいとも簡単にできるが、片付けてその状態を維持するには、常に力を傾注することとなると。

さらに、為政者は勝利できる希望的観測をもとに戦争をはじめ、威勢のいい話にメディアも飛びつき、民衆も熱情し戦争は無秩序に向かい終わらせるのは難しくなる。一方、平和は退屈感を生み、戦争に対するバリアーが下がり始めると、安全保障の希求、安全の脅威ほど戦争開始のキャンペーンとなり、いまの「軍拡」論争をまともに言い当てている。ロシアのウクライナ侵攻から1年。このタイミングでこの「中井久男」の放送は偶然ではなく、戦争への道に対する警鐘となっている。この先も「100分で名著」をみていきたい。

 

この類の番組は、NHKならではとも感じている。想像するに、各担当者がそれぞれ忖度も自主規制もなく提案し、編集の自由が担保されているものと推察している。番組制作にあたる担当者にもご苦労話を聞いてみたいと願います。                

                 


2022.12.26  今井 潤(放送を語る会)
                  
 ETVの「こころの時代」では、10月に2回放送した「問われる宗教とカルト」の反響が多くあったので、12月25日に第3回目を
放送しました。
 タイトルは「徹底討論 宗教と家族・性・こども」でした。
討論は・・・
(1)カルト問題における家族
(2)宗教は女性と子供を抑圧するのか
(3)世界と日本の諸宗教と女性の力
・・・をテーマに下記6人の学者、宗教者が討論しました。
島薗進(宗教学者)、岡田真水(僧侶、宗教学者)、櫻井義秀(北大大学院、宗教学者)、原敬子(上智大准教授、神学者)、
釈撤宗(僧侶、宗教学者)、八木久美子(外大教授、イスラム研究者)。
今回はイスラム研究家の八木さんがいたのでLGBTQRのことなど、以前にはない言説を聞くことができました。
                      
 6人の学者の旧統一教会の反社会性やジェンダー差別などに関する指摘があり、様々な角度から宗教と社会について討論がされました。
しかし、いま起きている旧統一教会の被害者や二世の人々の苦しさと直接かかわらない討論が続きました。
学問的、理論的な問題に関心を持つ視聴者には入門的番組になったと思います。
私は、反社会的行動により、政治を、また日本を動かす謀略的意図を持った宗教団体が存在し続ける事実をもっと知らせる必要があると
思いました。
 この番組を見た方の意見を聞きたいと思いました。
                                         

 違和感を持った「#NHK新しい営業」    2022.11.2. 山村惠一(放送を語る会・大阪)

 

 昨日(111日)午後8:45~のローカルニュース前の「#NHK」(広報番組3分間)で、NHKへの理解促進の活動として札幌放送局の営業現場の取り組みが紹介された。以前から前田会長の「改革」で各職場が揺れていることを聞いていて、営業現場はどのようなのかと見たが、強い違和感を持ちました。

 それは、営業職員が防災士の資格を取り、子供たちをまえに防災の出前講座をしていて、全国に43名の資格者がいて同様の活動をしているとのことである。この活動で、視聴者に納得と共感を得ることとして、新しい営業の姿として紹介されている。 うん!ちょっと待てよ。 防災教育で地元に貢献するのは悪いことではないが、あくまでもNHKに対する理解と納得は、放送で示すことではないのか。政権忖度放送局と揶揄されているさまのいま、もう一度しっかり視聴者の声に耳を傾けた放送こそに信頼回復の道がある。受信料収納の方法も大きく変わっているいま、営業の在り方の議論は必須なのだが、ちょっと筋違いではありま~せんかと指摘しておきたい。

以下のURLNHK+で視聴できます。

 

https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2022110108460?t=7&search=%25E5%2596%25B6%25E6%25A5%25AD&sort=desc

 


2022.06.22 山村惠一(放送を語る会・大阪)

 

NHKクローズアップ現代

いま音楽ができること 桑田佳祐66歳 “同級生” と平和を歌う 放送 6月21日(火)午後7:30~

 

5月末、朝日新聞の朝刊の全面広告に驚いた覚えがある。収益の一部は、困難に直面している「緊急配信開始」として、収益の一部は世界中の子供たちの未来といのちを守るために、セーブ・ザ・寄付するとし、桑田佳祐はじめ佐野元春、世良公則、Cher,そして野口五郎の5人の名前と、

タイトル「時代遅れのRock’n’roll Band」 桑田佳祐・作の歌詞が掲載されていた。

このチャリティソングを作詞、作曲した桑田佳祐さんが、“同級生” である66歳の4人の大物ミュージシャンに自筆の手紙などで呼びかけフィーチャーされたもので、6月21日のNHKクローズアップ現代では、ウクライナ情勢や長引くコロナ過のなか、音楽家として、いま、何ができるのか。桑田さんが歌に込めた思いをインタビューで迫る構成となっている。

桑田さんは「同じ時代同じ景色を見ていた仲間」とともに「いまの世の中音楽でなにか伝えたい」と語り、世良さんは「コロナ禍や争いが絶えない気持ちがふさぐような圧力みたいなものを感じているとき」にと共感。Cherさんや野口さんは自筆の手紙に応え、佐野さんはこの曲は「桑田さんのメインストリーム」とし、MV制作時の映像はオジサンたちが楽しく弾ける姿が心地よく、No More No Warも70年代世代のじいさんである私の心に刺さる番組でした。

 

    この頃「平和」という文字が

朧げに霞んで見えるんだ

           意味さえ虚ろに響く    

             (中略)

 

この世に大切な

ひとりひとりが居て

 歌え Rock’n’roll Band 

闇を照らす

      ダサい Rock’n’roll Band

 

 

番組の後半、中学生のころに影響を受けた、ボブ・ディランの「風に吹かれて」を桑田の日本語訳版で桑子アナとハモり、先のオリンピックにもみられたように、アスリートやエンターテナーは政治的発信を控えようなどの同調圧力の強まるなか、ダサくてオジサンでも声高でなくとも、次の世代に残したいものがあるとの姿にあっぱれである。参院選公示日を目前のときに放送をしたNHKにもあっぱれ。

6月28日午後7時57分まで NHK+で見逃しを視聴できます 

 


2022.05.09  今井 潤(放送を語る会)

 

5月8日(日)のNHKの2作品に注目した 

              

(1)日曜討論「子供、若者の声 社会と政治にどう届けるか?」
   いつもは面白くない番組ですが、今回はまじめな討論会だった。
   出席者は野田聖子(大臣)、田中れいこ(モデル)安田祐輔(キズキ代表)石井正宏(ℕPO)池本美香(日本総研)
   こどもの貧困の現状、海外の先進例の紹介など当事者が語る実例が何よりもインパクトがあった。
(2)Nスぺ「ヤングケアラー SOSなき若者の叫び」
   中でも30年の”介護人生”進学も就職も諦めた、カズヤさん(43歳)小学生から30年介護を続けた。
   父を早く亡くし、祖母と母の二人を介護した。25歳の時、母が寝たきりとなり、38歳の時母は死んだ。自分は一人となり、
   生きているのが卑怯だと思い、「自殺するのが正しいのではないか」と思った。
   いま、ストレスから固形物を食べることができず、母親のために作っていたミクサー食をスプーンですすっている。

   このシーンがショックだった。
                 
 NHKはこの20年間、Nスぺ「ワーキングプア―」、「無縁社会」と日本社会の貧困を現場から告発してきたが、モザイクなしの
 映像は今回もどんな番組よりも、静かだが訴える力を持っていた。

 再放送に注目してください。
                


2022.05.01  今井 潤(放送を語る会)

            

◎私の好きなミニ番組

           

(1)「駅ピアノ」
    NHKの駅ピアノ、空港ピアノが評判になり、一昨年は元旦の7時から5時間放送しました。
    現在は国内、国外の駅ピアノが放送されていて、私はロンドン、シシリー島が好きです。
(2)「今夜は笑顔で眠りたい!」 2021年11月から(30分
    若い似顔絵セラピストが街角、野球場などで出会った人の顔を描くというもので、5~6分の会話も面白く、魅力的だ。

    床屋さん、看護師志望の女性、へたなお笑い番組よりはるかに面白い。
    最後にできる似顔絵も顔のほかに情報が入っていて優れています。
(3)「沁みる夜汽車」 10分間のドラマ、2019年から。
    出稼ぎに行っていたころ、たまたま隣に座った女性に心を惹かれた男性、その後を訪ねると・・・・
    といった小さな思い出を乗せて夜汽車は走り去っていきます。
    森田美由紀アナウンサーの朗読が泣かせます。 

                  


2022.02.24  竹中美根子(放送を語る会・大阪)

                        

◎2月9日20時~ NHKEテレ ハートネットTV  

 私のリハビリ・介護「母がくれた死への予習時間」 
                    
 落合恵子さんが21年振りに発表した長編小説「泣きかたを忘れていた」。自宅で母を介護し看取った主人公の人生を描いています。

この作品のもとになったのは落合さん自身の体験です。パーキンソン病や認知症だった母・春恵さんを7年間自宅で介護し看取りました。

母の死から15年。今振り返ると2人で過ごした日々はまるで予習時間の様だったと言います。

2000年、春恵さんはパーキンソン病やアルツハイマー型認知症等を発症している事が分かりました。

少しづつ出来ない事が増え、まるで違う誰かになっていく様だったと言います。

自宅で母を介護する事を決意します。7年にわたった介護。手探りしながら母に寄り添いました。

最後は大好きな絵本を寝読み聞かせていました。昼夜を逆転して眠る時間に目が覚めてしまいます。

最初のうちは自分でページをめくっていたのが指先が上手くいかなくなりました。在宅で介護すると言うのは自然な流れだったそうです。

母も矢張り祖母をそうやってみていました。救いは同じ状況にある他のおうちの誰かと深夜にお電話でお話しする。

矢張り昼夜逆転気味の親御さんを観ているお友達から電話がかかってきて或いはこちらからかけて「今日はね」って言う話から始まって、

情報を公開し情報をいただきました。

当時、なかなか情報も無かったです。

私が書きだした理由は、こんなに情報が少ないならば「こう言う場合もありますよ。こう言う場合が絶対ですよじゃなくて「ありますよ」って

言う形の情報提供したいと思ったのです。私が60歳になった時の話ですが毎朝母にCDをかけて歌を聴かせていた時に「村の先頭さん」をかけて

「”ことし60のお爺さん”と言うセリフを、その日に誕生日を迎えていた私は「お母さん私おばあさんになったよ」って言った瞬間、母がケラケ

ラ笑ったんです。あの笑いは私の楽しそうな声に反応で笑ったのかしらと思いました。

落合さんが産まれたのは1945年。春恵さんは未婚のまま出産し戦中戦後の混乱期1人で子育てに奔走しました。

んな母を介護した日々は落合さんにとって掛け替えのないものでした。2007年8月春恵さんは息を引き取りました。母を看取って15年。

振り返ると今でも後悔する事は少なくないと言います。これから迎えるであろうと言うか、もう既に迎えている老いとか加齢による変化に対する

予習…どんなに不公平で差別のある社会だって公平に誰もがこの道を通って行くんだって事は感じます。

 人生の締め括りが近づいている今、落合さんはこれまで以上に「自分を生きる」事にこだわりたいと考えています。

母が残した言葉を今も大切にしているからです。

「自分の人生は自分で決めなさい」と言うお母さんの言葉…それは戦争を体験して自分の人生って言いながら何一つかなわなかった日々もあった

でしょうし、これからの子供達は自分の人生ちゃんと掴んで生きていきなさいって思いがとても強くあったと思います。

落合さんは自分の人生を自分で決める為、毎年元旦に終末期の医療選択を意思表示する「リビング・ウィル(事前指示書)」を書いているそう

です。

 落合さんと私は同じ年齢です。私は母を三年前に見送りました。

一時期胃ろう等を考えた事もありましたが、すっかり変わり果てた母の姿を見て母の為にもやめておこうと思いました。

《あれもしてあげたかった》《これもしてあげたかった》と後悔ばかりしていました。

 

 この番組はアナウンサーと劇作家の宮本亞門さんとの鼎談という地味な番組でしたが心に響きました。